南条：いいですか？　今回この大蛇伝説が残る絶海の孤島、大蛇島で起きた連続殺人事件。
　　　これは決して伝説の大蛇の仕業ではありません。れっきとした人の手による犯行です。
　　　凶器、手口、アリバイ、動機……全て解き明かしました。犯人は……！！




　　　コ　　イ　　ツ　　の　　中　　に　　い　　る　　！　　！　　！

生原：どうも、さっき容疑者全員呑み込んだ大蛇です。ごちそうさまでした。

南条：何なんだお前は。そしてなんてことをしてくれたんだお前は。
　　　何で俺の推理ショーの直前に現れて容疑者全員ペロリといっちゃうんだよ。台無しじゃねぇかよ。

生原：いやぁ、びっくりしましたよ。数百年の眠りから覚めたら殺人事件の犯人にされかけてんですもん。

南条：このタイミングで目覚めなくてもいいじゃねぇかよ。何で今日という１日をチョイスしちゃったんだよ。
　　　ていうかもはやお前真犯人だからね。だって犯人呑んじゃってるからね。黒幕だよ黒幕。

生原：そんなことより教えてください探偵さん！　犯人は一体誰なんですか！？

南条：もう言っても意味ねぇよ。だって犯人お前の胃袋に収まっちゃってるもんよ。
　　　ブタ箱にぶち込まれる前にヘビ腹にぶち込まれちゃってんだもん。因果応報とは言えども。

生原：教えてくださいよ！　だって犯人は大蛇伝説になぞらえて人を殺したんでしょう！？
　　　それってつまり、僕に罪を被せようとしたってことじゃないですか！

南条：お前もう殺っちゃったじゃん。被せられた嘘を真に変えちゃったじゃん。
　　　何度も言うがもうお前が真犯人、いや真犯蛇だよ。現行犯逮捕だよ出頭しろ出頭。

生原：ちなみにこれは余談なのですが、僕は胃の中の物の溶かし具合を自在に調整することが出来ます。

南条：いっちょまえに胃の中の容疑者人質に取りやがって。容疑者を生かすも殺すも俺次第ってか。
　　　わかったよ、言うよ。俺だって推理言えなくてフラストレーション溜まってたわけだしさ。

生原：本当ですか！？　ありがとうございます、そうと決まれば早く教えてください！
　　　誰が犯人なんですか、てか誰が殺されたんですか！？　あなた誰なんですか！？

南条：そこまで説明しなきゃなんねえのかよ。そりゃわかんねえよなお前さっき目覚めたんだもんな。
　　　えーっと、まず最初の被害者はホテルのプールで殺されてたんだけど……。

生原：……ほ、ほてる……？　ぷーる……？

南条：そりゃわかんないよねー。数百年前に存在しなかった文化だもんねー。
　　　どうすんだよ、今回の肝はホテルのエレベーターを利用したトリックだぞ？　わかんねえだろ、わかんねえよな？

生原：す、すうひゃくねんまえ……？

南条：それはわかるだろ。お前がさっき自分の口から吐き出した言葉だぞ。
　　　そもそも蛇に言語理解を要求することがムチャなんだろうけどよ。今更だけどなんで蛇が喋ってんだよ。

生原：あーっ、もういいです、犯人だけ教えてください！
　　　このままじゃイライラして胃液がとめどなく溢れてきちゃいそうです！

南条：全然胃の中調節出来てねぇじゃねぇかよ。人質の命運お前の気分次第かよ。
　　　わかったよ、犯人は滝澤だよ滝澤。お前が２番目に呑み込んだ茶髪の奴だよ。

生原：滝澤……！？　滝澤というと、今僕の胃の右上で体をかがめてる奴ですか……！？

南条：わかんねえよ。どんなに俺が名探偵でも大蛇の胃の中は見透かせねえよ。
　　　そいつは被害者の３人に妹を殺されてたんだよ。妹グラフィックデザイナーだったんだってよ。わかんねぇだろヘヘヘ！

生原：そんな……胃の中の感覚だとそんな凶行に及びそうには思えないのに……。
　　　さながらハムスターの仮面の下にベンガルトラの牙を隠していたといったところでしょうか……。

南条：ハムスターとかは知ってんのかよ。数百年の間にどうやってそんな知識仕入れたんだよ。
　　　もう気は済んだだろ、胃の中の奴ら吐いてさっさと地中に帰れよ。寝ろったら寝ろ。
　　　そんで数百年後にまた目覚めて人類の進歩にオロオロしてろよ。未来人にとっ捕まれバーカ。

生原：わかりました、最後にこれだけは言わせてください。
　　　どんな理由があろうとも、人を殺すなんて愚かな過ち。
　　　愚かな過ち、略して『　　　オ　　　ロ　　　チ　　　』ですね。（にやーり）

南条：お前マジで何なんだよ！！！